2006年から書き続けているネガポジ変換型社長コラム(2026年10月10日) 寿司職人を目指した、ある若者の話がある。毎日皿洗いや掃除などばかりで、いっこうに寿司を握らせてもらえず、何も教えてもらえないことに嫌気が差し、エプロンをぐるぐる巻きにして一度は店を飛び出した男だ。しかし、彼はやがて現場に戻ってきた。しばらくして大将から「そろそろ寿司を握ってみないか」と声をかけられ、板場に立った時、大将が与えたアドバイスはほんの数点、若者が見ても気づかなかった部分のみであった。だが、彼はその後、見違えるような大物の寿司職人へと成長を遂げた。なぜ、わずかな助言だけで男は大成したのか。答えは明確である。彼は大将や先輩の姿、手さばき、現場の空気を骨の髄まで観察し、「感覚」を自らの中に溜め込んでいたからだ。これこそが、私が提唱する「職人的学習法」の真髄である。学校教育における学習の軸は「暗記」と「理解」である。これらが得意な者は試験で高得点を取るが、ビジネスの現場においてはそれだけでは何の意味もなさない。現場で使えない知識はただの無用物であり、いわゆる「頭でっかち」に過ぎないのだ。当社のなかで仕事ができるようになったと評価される社員には、全員が口を揃えて「人の仕事を見て覚えた」「手本を見た」と言う明確な共通点がある。知識を頭に入れることと、それを現場で使えるようになることの間には巨大な溝が存在し、その溝を埋めるものこそが「感覚」である。本質的な能力の構造とは、「感覚」という太い柱を中心に据え、その両脇を「暗記」と「理解」で補強するという形を取らねばならない。中心の「感覚」が育っていなければ、両脇の知識がいくら強固でも使い物にならないのだ。当社が扱う保険や金融商品、多様な働き方の習得においてもこの原則は完全に一致する。マニュアルを暗記・理解するだけでは実務力は身につかない。優れた先輩の手本を見、盗み、実践を通じて己の「感覚」へ落とし込み、その上で暗記や理解と調和させていくプロセスこそがプロへの最短ルートである。だからこそ、当社は採用や評価において、経験の有無、年齢、性別、学歴といったものは参考情報に過ぎず、最重要項目とはみなさない。我々が最も重視する大きな基準が、「職人的な学習法ができるかどうか」である。人の仕事から手本を見出し、自らの感覚を研ぎ澄ませ、知識を実践力へと変換できる人間こそが、これからの時代に真に活躍するプロフェッショナルであると断言する。 バックナンバー 【 2026年記事 】 2026年10月 2026年9月 2026年8月 2026年7月 2026年6月 2026年5月 2026年4月 2026年3月 2026年2月 2026年1月 【 2025年記事 】 2025年12月 2025年11月 2025年10月 2025年9月 2025年8月 2025年7月 2025年6月 2025年5月 2025年4月 2025年3月 2025年2月 2025年1月 【 2024年記事 】 2024年12月 2024年11月 2024年10月 2024年9月 2024年8月 2024年7月 2024年6月 2024年5月28日特別編 2024年5月 2024年4月 2024年3月 2024年2月 2024年1月 【 2023年記事 】 2023年12月 2023年11月 2023年10月 2023年9月 2023年8月 2023年7月 2023年6月 2023年5月 2023年4月 2023年3月 2023年2月 2023年1月 【 2022年記事 】 2022年12月 2022年11月 2022年10月 2022年9月 2022年8月 2022年7月 2022年6月 2022年5月 2022年4月 2022年3月 2022年2月 2022年1月 【 2021年記事 】 2021年12月 2021年11月 2021年10月 2021年9月 2021年8月 2021年7月 2021年6月 2021年5月 2021年4月 2021年3月 2021年2月 2021年1月 【 2020年記事 】 2020年12月 2020年11月 2020年10月 2020年9月 2020年8月 2020年7月 2020年6月 2020年5月 2020年4月 2020年3月 2020年2月 2020年1月 【 2019年記事 】 2019年12月 2019年11月 2019年10月 2019年9月 2019年8月 2019年7月 2019年6月 2019年5月 2019年4月 2019年3月 2019年2月 2019年1月 【 2018年記事 】 2018年12月 2018年11月 2018年10月 2018年9月 2018年8月 2018年7月 2018年6月 2018年5月 2018年4月 2018年3月 2006年7月~2018年2月(ほけん工房ページへ移動します)